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綿津見神(ワタツミ)とは?
綿津見神(ワタツミ)は、「海そのものを神格化した存在」であり、『日本書紀』や『古事記』に登場する重要な神様のひとりです。その名の通り「海(綿=海、津=港、見=神霊)」を表しており、海上交通の守護・水難除け・漁業繁栄などの神徳を持ちます。
日本神話におけるエピソード
大綿津見神の誕生と神産みの神話
綿津見神が最初に登場するのは、『古事記』の神産みの段においてです。ここで生まれたのは、大綿津見神(おおわたつみのかみ/大海神)で、伊邪那岐命(いざなぎ)と伊邪那美命(いざなみ)の間に誕生した神とされています。その名のとおり、海を司る主宰神であり、日本神話における最も古い海神の一柱です。
綿津見三神の誕生と禊神話
伊邪那岐命が黄泉の国から帰還し、穢れを祓うために禊(みそぎ)を行った際、海中から生まれたのが綿津見三神(わたつみさんしん)です。綿津見三神は底津綿津見神(そこつわたつみのかみ)、中津綿津見神(なかつわたつみのかみ)、表津綿津見神(うわつわたつみのかみ)を指し、海の底・中・表面をそれぞれ守護する神とされ、海の立体的構造すべてを掌握する存在です。この三神は、大綿津見神と同一神とする説と別の存在とする説があり、解釈が分かれる点でもあります。この時、同時に生まれたのが住吉三神(住吉大神)であり、彼らもまた航海の守護神として広く信仰されるようになりました。
阿曇氏と穂高見命
綿津見三神の子とされる宇都志日金析命(うつしひかなさくのみこと)または穂高見命(ほたかみのみこと)は、古代の海人族である阿曇氏(あづみし)の祖と伝えられています。現在、福岡県の志賀海神社では阿曇氏の末裔が宮司を務めており、綿津見信仰の中心地のひとつとなっています。また、穂高見命は信濃(現在の長野県)にも信仰が伝わり、穂高神社などで祀られるようになりました。
山幸彦と海幸彦の神話
有名な山幸彦と海幸彦の神話にも綿津見神は重要な役割を果たします。兄・海幸彦(火照命)の釣り針を失った弟・山幸彦(火遠理命)は、塩土老翁の導きで綿津見大神(豊玉彦)の宮を訪れます。そこで綿津見大神の娘・豊玉毘売(とよたまびめ)と結ばれ、やがて子を授かります。その子は鵜葺草葺不合命(うがやふきあえずのみこと)で、後に豊玉毘売の妹・玉依毘売(たまよりびめ)に育てられ、さらに結婚して初代天皇・神武天皇が生まれることとなります。このように、綿津見大神は神話において天皇家の祖先神とつながる重要な位置に立っています。
別名
- 大綿津見神(おおわたつみのかみ)
- 少童命(わたつみのみこと)/li>
- 海神(わたつみ、わたのかみ)
- 海神豊玉彦(わたつみとよたまひこ)
御利益(ご利益)
綿津見神は、以下のようなご利益で広く信仰されています。
・航海安全、海上交通の守護、漁業繁栄、水難除け、災難除けなど
綿津見神(ワタツミ)を祀る神社

福岡県の志賀海神社をはじめ多くの神社でお祀りされています。
- 志賀海神社(福岡県福岡市)
- 渡津海神社(山口県防府市)
- 和多都美神社(長崎県豊玉町)
- 鹿児島神社(鹿児島県鹿児島市)
- 穂高神社(長野県安曇野市)
- 渡海神社(千葉県銚子市)
- 全国各地の綿津見神社
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