【日本神話】伊邪那岐命(イザナギノミコト)とは?国生みと神生みを行った創世の神を解説

日本の神様

伊邪那岐命(イザナギノミコト)は、日本神話における創世の神です。 『古事記』や『日本書紀』では、妻の伊邪那美命(イザナミノミコト)とともに日本列島を生み出した神として描かれています。また、国生みだけでなく数多くの神々を生み出した神生み神話の中心人物でもあります。 さらに黄泉国神話では亡き妻を追って死者の国へ向かい、その後の禊によって天照大御神、月読命、須佐之男命という三貴子を誕生させました。 伊邪那岐命の物語は、日本神話の始まりから主要な神々の誕生までをつなぐ壮大な物語です。 この記事では、伊邪那岐命の神話や功績、ご利益についてわかりやすく解説します。

 

ひと目でわかる伊邪那岐命

伊邪那岐命は、日本列島と数多くの神々を生み出した創世神です。天照大御神須佐之男命の父神としても知られています。

  • 日本神話を代表する創世神
  • 伊邪那美命の夫神
  • 国生み神話の主人公
  • 神生み神話の中心人物
  • 黄泉国へ向かった神
  • 禊によって三貴子を誕生させた
  • 多くの神社で祀られている

伊邪那岐命とは?

神世七代の最後に現れた神

伊邪那岐命は、日本神話における神世七代(かみよななよ)の最後に現れた神です。 神世七代とは、天地開闢(てんちかいびゃく)の後に誕生した神々の総称であり、日本神話の創世期を構成する重要な神々を指します。最初に現れた別天津神(ことあまつかみ)は単独で存在する独神(ひとりがみ)でしたが、神世七代が進むにつれて男女一対の神々が登場するようになります。その最後を飾るのが伊邪那岐命と伊邪那美命でした。

『古事記』では、高天原の神々が未完成だった世界を整えるため、この二柱へ重要な使命を託したと伝えています。 それまでに現れた神々は世界の基礎を形作る存在でしたが、伊邪那岐命と伊邪那美命は実際に国土や神々を生み出し、世界を完成へ導く役割を担いました。そのため伊邪那岐命は単なる神世七代の一柱ではなく、日本神話における創造の中心人物として位置付けられています。 後に天照大御神須佐之男命などの重要な神々が誕生することを考えても、伊邪那岐命は日本神話の大きな流れを生み出した祖神といえます。

伊邪那美命との夫婦神

伊邪那岐命は伊邪那美命と対になる神として誕生しました。 日本神話では二柱は夫婦神として描かれ、共に国を生み、神々を生み、世界を築き上げた存在として知られています。高天原の神々は未完成の地上世界を完成させるため、伊邪那岐命と伊邪那美命へ天沼矛を授けました。二柱は神々の期待を受けながら地上世界の創造という大役に挑むことになります。

淤能碁呂島に降り立った二柱は天之御柱(あめのみはしら)を建て、その周囲を巡ることで夫婦の契りを結びました。しかし最初の婚姻では順序を誤ったため国生みは失敗し、高天原の神々からやり直しを命じられたと伝えられています。再び正しい手順で婚姻を行ったことで、ようやく国生みが成功しました。

伊邪那岐命と伊邪那美命の関係は、日本神話最大の夫婦神として現在も広く信仰されています。 国生みや神生みを共に成し遂げたことから、縁結びや夫婦円満の神として祀られることも少なくありません。

国生み神話

天沼矛で大地を生み出す

高天原の神々は伊邪那岐命と伊邪那美命に対し、「漂っている国土を修理固成せよ」 と命じました。 そこで二柱へ授けられたのが天沼矛(アメノヌボコ)です。天沼矛は神々が持つ神聖な矛であり、国生み神話の象徴ともいえる神器です。伊邪那岐命と伊邪那美命は天の浮橋に立ち、眼下に広がる混沌とした海を天沼矛でかき回しました。

そして矛を引き上げた際、その先から滴り落ちた塩が凝り固まり、一つの島が誕生したと伝えられています。 この島が淤能碁呂島(オノゴロジマ)です。 淤能碁呂島は日本神話において最初に誕生した島とされ、日本列島創造の出発点となりました。この場面は日本神話における天地創造の象徴的な場面であり、多くの絵巻や神社の伝承にも描かれています。また海から島が生まれるという描写は、島国である日本ならではの世界観を反映しているとも考えられています。

日本列島を生み出す

淤能碁呂島に降り立った伊邪那岐命と伊邪那美命は、そこを拠点として国生みを始めました。二柱は夫婦神として結ばれた後、次々と島々を生み出していきます。『古事記』では、淡路島をはじめとして四国、隠岐、九州、壱岐、対馬、佐渡、そして本州が誕生したとされています。これらは総称して大八島国(おおやしまのくに)と呼ばれ、日本列島の起源を示すものとして語られています。

もちろん現在の地理と完全に一致するわけではありませんが、古代の人々が日本という国の成り立ちを神話として表現したものと考えられています。 国生みによって世界の舞台が整えられたことで、その後の神生み神話へと物語は進んでいきます。さらに天照大御神須佐之男命大国主神神武天皇へと続く壮大な神話も、この国生みから始まりました。

神生み神話

自然を司る神々の誕生

国生みによって日本列島を生み出した伊邪那岐命と伊邪那美命は、続いて世界を構成する神々を生み始めました。二柱が生んだ神々は単なる人物ではなく、山や海、風、大地、木々など自然界そのものを神格化した存在でした。『古事記』では、大山津見神(オオヤマツミノカミ)をはじめとする山の神々や、大綿津見神(オオワタツミノカミ)などの海の神々が誕生したと伝えられています。 さらに風を司る志那都比古神(シナツヒコノカミ)、野や草木に関わる神々も次々と生まれました。

古代の人々は自然のあらゆる場所に神が宿ると考えていました。山の恵み、海の恵み、風の力など、人々の暮らしを支える存在はすべて神々の働きによるものだと考えられていたのです。 神生み神話は、そのような日本古来の自然信仰を表した物語ともいえます。また、ここで誕生した神々の子孫や系譜は後の日本神話にも数多く登場します。そのため神生み神話は、日本神話に登場する神々の起源を語る重要な場面として位置付けられています。

火之迦具土神の誕生

神生み神話の最後に誕生したのが、火の神である火之迦具土神(ヒノカグツチノカミ)でした。 火は人々の生活を豊かにする重要な存在です。食べ物を調理し、寒さをしのぎ、金属を加工するためにも欠かせません。しかしその一方で、火は大火災や山火事を引き起こし、人々の生活を破壊する恐ろしい力も持っています。火之迦具土神は、そうした火の持つ恩恵と危険性の両方を象徴する神として描かれています。

ところが、その誕生は大きな悲劇を生みました。火之迦具土神の持つ激しい炎によって、出産した伊邪那美命は全身に大やけどを負ってしまったのです。これまで数多くの国や神々を生み出してきた伊邪那美命でしたが、その傷はあまりにも深く、ついには命を落としてしまいます。日本神話はここで初めて「死」という概念に直面することになります。 火之迦具土神の誕生は、日本神話における創造の時代から死と再生の時代への転換点となった重要な出来事です。

黄泉国へ向かう

妻を取り戻そうとする

最愛の妻である伊邪那美命を失った伊邪那岐命は、深い悲しみに包まれました。 伊邪那岐命は伊邪那美命の死を受け入れることができず、「もう一度妻に会いたい」と願うようになります。そして決意を固めた伊邪那岐命は、死者が住む黄泉国(ヨミノクニ)へ向かいました。

黄泉国は生者の世界とは異なる死の世界であり、一度入れば簡単には戻れない場所と考えられていました。 それでも伊邪那岐命は妻を取り戻したい一心で黄泉国へ足を踏み入れます。

黄泉国で見た恐ろしい姿

黄泉国で再会した伊邪那美命は、伊邪那岐命へこう告げました。「黄泉の神々に相談してくるので、その間は決して私の姿を見ないでください」 伊邪那岐命はその言葉に従って待っていました。しかし待ち続けるうちに不安が募り、ついに約束を破ってしまいます。櫛の歯を折って火を灯し、伊邪那美命の姿を見たのです。するとそこには、生前の美しい姿はありませんでした。身体には蛆がわき、腐敗が進み、さらに雷神たちが宿る恐ろしい姿へ変わっていたと伝えられています。

その光景に驚いた伊邪那岐命は思わず逃げ出しました。一方、自らの姿を見られた伊邪那美命は激怒し、黄泉醜女(ヨモツシコメ)や黄泉軍を差し向けて追跡します。そして最後に黄泉比良坂で巨大な岩を挟み、二柱は永遠の別れを迎えることになるのです。

禊と三貴子の誕生

穢れを清める

黄泉国から逃げ帰った伊邪那岐命は、自らが死者の国へ入ったことで穢れを身にまとったと考えました。古代日本では死は穢れを伴うものとされており、そのままでは神としての力を失ってしまうと考えられていました。そこで伊邪那岐命は筑紫の日向にある橘の小戸の阿波岐原へ向かい、身体を清めるための禊(みそぎ)を行います。

衣服や装飾品を外し、川の水で身を洗うたびに新たな神々が誕生しました。神道において禊は非常に重要な儀式です。現在でも神社で行われるお祓いや清めの考え方は、この伊邪那岐命の禊に由来するとされています。

天照大御神・月読命・須佐之男命が誕生

伊邪那岐命が禊を行った際、日本神話の中心となる三柱の神が誕生しました。まず左目を洗った時に生まれたのが天照大御神です。 天照大御神は太陽神であり、高天原を治める最高神となりました。続いて右目から月読命(ツクヨミノミコト)が誕生します。月読命は夜や月を司る神として知られています。 そして鼻を洗った際に誕生したのが須佐之男命です。須佐之男命は海原を治める神となり、後に天岩戸神話ヤマタノオロチ退治で活躍することになります。

この三柱は三貴子(さんきし)と呼ばれ、日本神話の中心的存在として位置付けられています。 つまり伊邪那岐命の禊は単なる身の清めではありませんでした。 黄泉国という死の世界から帰還した神が、新たな時代を担う神々を誕生させることになります。 ここから天照大御神を中心とする高天原神話が始まり、日本神話は新たな展開へ進んでいくことになります。

別名

  • 伊邪那岐
  • 伊弉諾
  • 伊耶那岐

伊邪那岐神(イザナギ)の御利益

伊邪那美命とともに最古の夫婦神とされ、多くの神々を生み出したことから夫婦和合、縁結びの神様としても知られています。また、国土から自然といった世界を創り出していったことから殖産振興の神様として知られ、歴史上はじめての禊をされたことから、厄除の神様としても知られています。

御利益
◆御利益
・厄除け、開運、夫婦円満、縁結び、恋愛成就、子孫繁栄、殖産振興

伊邪那岐神(イザナギ)を祀る神社

伊邪那岐神を祀る三峯神社
三峯神社
  • 伊弉諾神宮(兵庫県淡路市)
  • →『古事記』、『日本書紀』にイザナギの幽宮と伝わる式内明神大社です。

  • おのころ島神社(兵庫県南あわじ市)
  • →『古事記』・『日本書紀』の国産み神話に登場する、「おのころ島」と伝承される丘に立つ神社であり、イザナギ・イザナミを主祭神として祀っています。

  • 江田神社(宮崎県宮崎市)
  • →イザナギが禊を行ったとされる地です。

  • 多賀大社(滋賀県多賀町)
  • 月讀宮の伊佐奈岐宮(三重県伊勢市)
  • 三峯神社(埼玉県秩父市)
  • →ヤマトタケルが東征の際、碓氷峠に向かう途中で三峯山に登り、イザナギ・イザナミの国生みを偲んで創祀しました。

  • 筑波山神社(茨城県つくば市)
  • 常陸國總社宮(茨城県石岡市)
  • 左右神社(千葉県東庄町)
  • 高塚熊野神社(静岡県浜松市中央区)
  • 雄山神社(富山県立山町)
  • 熊野速玉大社(和歌山県新宮市)
  • 佐太神社(島根県松江市)
  • 小戸神社(福岡県福岡市西区)
  • →『古事記』・『日本書紀』の筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原と伝わる。小戸大神宮、小戸小神宮。

  • 全国の伊邪那岐神社

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